不幸な好都合

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 【夏風学園】に転校したオレ……。  クラスで、ピアノをやってるヤツもいないし、紗菜に似ているようなコもいない。  ま、その代わりギターをやってるヤツは、ウヨウヨいたりする。  気兼ねなく、学園生活を過ごす。  休み時間は、バスケやサッカー。放課後は、ゲーセンで音ゲー 。常連仲間と、ギターやドラムでセッション。  ピアノなんてなくても、オレはオレで、いつもどおり生きていける。そこそこ、高校生活を楽しんでいける。  それは、ある意味……自分にそう暗示をかけてるだけなのかもしれない。  顕在意識と潜在意識。  自分の意思では、どうにもならない、もう一人の自分。  ごまかせば、ごまかすほど、抑えきれなくなる、もうひとつの意識。  〃忘れる〃という行為は、あくまで自律的なものだ。意識的に忘れることなど、本当はできないのかもしれない。  せっかくのリスタートだ……新しい自分で、生きていきたい。  もう、後戻りはしたくない。
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