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保健室で治療を受け、授業に戻ろうと、旧校舎の廊下を歩いていた。
すると、どこからか、ピアノのメロディが聞こえてきた。
甘く切ない……聴き慣れた響き……間違いない、これはオレの作曲したノクターン。
ー嘘だろー
この曲を知っている人間は、自分しかいない。
……そのはすだ。
では、いったい……だれがこの曲を弾いている?
校舎の上のほうの階から聞こえてくる。
確か旧校舎の四階は、【開かずの音楽室】と呼ばれた、【第二音楽室】があるはずだ。
十年前の夏。ひとりの女子生徒が、ピアノを弾いてる最中に心臓発作を起こして亡くなった。
以来、そこはその女子生徒の慰霊の場として、当時の姿のまま、放置されている。
だれかのイタズラかもしれないが、だれであろうと確かめなければならない。
この曲をなぜ知っているのか?
階段で、四階まで上がると、ピアノの音は、より判然と聴こえるようになった。
【第二音楽室】
そのドアの手前で、オレは唖然となる。
ドアの手前の両脇に、盛り塩がしてある。
引き戸のドアの上部には、南京錠が。
ドアに手をかけたが、開くわけない。
ピアノの音は止まらない。比較的、長い曲だ。 あと二分は終わらないだろう。
さらに、ムカつくことに、オレよりも巧く弾いている。
これは、単なる都市伝説を狙った、イタズラじゃない。
たぶん、オレへの挑発だ。
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