第1章~ 何度、偶然を装って声を掛けようと思ったか。

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だが、涼は実は誰にも心を開いていないのも、私は知っている どんなに仲良くなっても、私にでも、涼は心の一番奥は見せてはくれないのだ 当然のように思う だって涼は、妹の花蓮にでさえ、あまり心を開いていない それに気づいた中等部2年の頃から、結局今まで、なぜそんなにも心を閉ざすのかはわからずじまいだった 「今日もここで勉強?お疲れ様だね」 「ありがとっ。陽花もバイトお疲れ。」 涼は数学が苦手だ ほかの理系科目もあまり得意ではなく、それとは逆に英語はペラペラで国語も社会も人並み以上の、根っからの文系なのだ それとは正反対に、根っからの理系である私は涼に英語を教えて貰う代わりに数学や理科を教えることが多い 今日も数学でわからないところがあったのだろう 問題集には、応用の問題の横に《解きなおし》の5文字があった 「…その問題、解けそう?よかったら、また教えてあげるけど?」 「え、いいの?なんかいつも教えてもらってばかりで悪いなぁ……」 「涼だって英語教えてくれるじゃん。きっと家帰ったら寝ちゃうから、一緒に勉強してもいい?」 私はそういってカバンを涼の横の席に置き、これからもうひと頑張りするために財布をもって注文カウンターにむかった
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