第1章~ 何度、偶然を装って声を掛けようと思ったか。

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「陽花ちゃん、お疲れ様。」 ドアのそばにいた黒エプロンのバイトの先輩がにこやかに送り出してくれた 時刻は10:32 そろそろ、帰らないと警察の補導対象になってしまいかねない 1時間程度で終わらせるはずだった勉強が、やり始めると案外続くもので少し長引いてしまった 「今日もありがとうね。やっぱり陽花の教え方わかりやすい」 「ほんとに?よかった。」 「うん、陽花はやっぱりいい数学の先生になれるよ。」 「涼だって、いい英語の先生になれるよ。わかりやすいし。」 あたりはすっかり暗くなって肌寒い 都会とはいえ、郊外の、それも住宅地であるここはもう人通りもほとんどなく、家の窓から漏れる明かりと、ところどころ並ぶ街灯だけが頼りだった ────だからこそ、都会でも星が綺麗に見える 「……ねぇ、涼。ちょっと、寄り道しない?」 「ん?どこに?」 「ほら、家の近くの公園。涼は草アレルギーだから公園には入れないけど、その中の丘なら、コンクリートの道だから登れるでしょ?」 「……いいけど……なんで?」 今日は22日。 時刻はそろそろ、23時に近い 陽花は最近ネットで調べたあるサイトの内容を思い出しながら、そろそろかと空を見上げていた
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