もしミステリ作家が犯罪者になったら

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 ドアをそっと開けて左右を確認し、久留米警部達の姿が無い事を確かめると体を通路に出してみる。  どうやら思い過ごしだったようだ。  「シギ、蛍、櫻子、巧く撒けたようじゃ、行くよ」 部屋の中で待機中の蛍と櫻子に声を掛け、久留米警部達が調査済みの部屋へ移ろうとしたその時だった。  「動くな」「警察よ」「手をあげなさい」  久留米警部と岡野警部補と石黒刑事の声がしたので振り返ると、三人共、僕に銃口を向けているでは無いか。  「嘘じゃろ? 何で?」  何でじゃろうか、僕は今回の籠城作戦で片時も油断なぞせんかった筈なのに、何で?  「両極端なのよねえ、本市さんは」  「油断した時は一切の猜疑心を放棄する反面、警戒する時は神経質な位警戒する。分かり易い長所ね。探したわよ」  「でも、まさか罠だと思わせて素通りさせる作戦だったとは…」  久留米警部補達は、僕に銃口を向けた儘僕の欠点を話し始めた。 こうして向けられた銃口も、仕事柄見慣れてはおるんじゃが、物凄く怖い。  「詰めが甘いねぐるにゃんや朔ちゃんも、かずさんも、僕が丸腰で来ると思ったの?」
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