もしミステリ作家が犯罪者になったら

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        【1】  「蛍、櫻子、夜景が凄く綺麗だよ」  一人目の人質朱園しぎさんが窓の外に見える無数の赤いネオンを見ながら、春咲蛍と佐倉櫻子をベランダへ招いた。  本当に綺麗な夜景だね……。 これが本物の夜景であれば、そう言いたい所じゃが、外の赤いネオンは残念ながら警察のパトカーなんよな。 間もなく僕が三人の女子高生を監禁した部屋まで突入してくると思うと緊張してしまう。  「本物だ、凄く綺麗」  「ほんちーオジサマも夜景見る?」  厭、警察のパトカーなんじゃが、今ベランダから姿を見せると助けを呼んでいるように見えてしまい、却って警察の志気を煽ってしまう。  「いや、僕は遠慮しとく」  煙草に火を点けて一服すると、缶ビールを開けて喉元に流し込む。警察にはつまみも要求したんじゃが、女子高生三人のおやつになってしまった。  「ほんちーオジサマ、私もビール一本空けても?」  「飲むんかい」  「私も飲みたいです」  「俺も」  「あとお煙草とおつまみ貰っても?」  違法行為の斡旋は今回の作戦には無い筈じゃが、これじゃあ僕の犯罪者のグレードが上がってしまうじゃないか。 次はノンアルコール頼もうかな。  「ええけど。一缶を三人で仲良く分けるんよ」  結局、飲酒と喫煙を許可してしまった。
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