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「彼の弱点は……」
そう言いかけた時、数メートル進んだ先の、半開きになった扉からユラユラと煙が立ち上っているのが見えた。
丁度良い、説明する手間が省ける。
「ぐるにゃん、あれ、煙草の煙よね?然もメビウスだわ」
「彼が日頃から吸っているタイプの煙草ですね」
朔ちゃんもかず刑事も喫煙はしないから、煙草のニコチンの臭いには敏感なのだが、私にも鼻を刺激するこの臭いで彼だと判る。
突入する前に差し入れを寄越した煙草もメビウスだし、喫煙者と言えば本市平次しかいないから間違いは無いだろう。
「どうする?」
「畳み掛けますか?」
朔ちゃんとかず刑事は私の指示を仰ぐ。この儘畳み掛ければ一気に決着を着けられるかも知れないが、余りにもあざと過ぎる。分かり易い。読みやすい。
まるで、読まされているようだ。
本市平次が、自分から居場所を知らせるようなミスをするだろうか? それは考えられない。
罠の臭いがする。
私達を煙のする部屋迄おびきよせる罠か? はたまた、私達を此処で足留めさせる為の罠か? どっちよ。
「もう少し待ってくれる? それから背後には充分注意して、彼はこの近くにいる可能性がある」
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