もしミステリ作家が犯罪者になったら

8/18

43人が本棚に入れています
本棚に追加
/236ページ
 「彼の弱点は……」  そう言いかけた時、数メートル進んだ先の、半開きになった扉からユラユラと煙が立ち上っているのが見えた。 丁度良い、説明する手間が省ける。  「ぐるにゃん、あれ、煙草の煙よね?然もメビウスだわ」  「彼が日頃から吸っているタイプの煙草ですね」  朔ちゃんもかず刑事も喫煙はしないから、煙草のニコチンの臭いには敏感なのだが、私にも鼻を刺激するこの臭いで彼だと判る。 突入する前に差し入れを寄越した煙草もメビウスだし、喫煙者と言えば本市平次しかいないから間違いは無いだろう。  「どうする?」  「畳み掛けますか?」  朔ちゃんとかず刑事は私の指示を仰ぐ。この儘畳み掛ければ一気に決着を着けられるかも知れないが、余りにもあざと過ぎる。分かり易い。読みやすい。  まるで、読まされているようだ。 本市平次が、自分から居場所を知らせるようなミスをするだろうか? それは考えられない。  罠の臭いがする。  私達を煙のする部屋迄おびきよせる罠か? はたまた、私達を此処で足留めさせる為の罠か? どっちよ。  「もう少し待ってくれる? それから背後には充分注意して、彼はこの近くにいる可能性がある」
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加