もしミステリ作家が犯罪者になったら

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 「でも、喫煙者は本市さんしかいない筈でしょう? ぐるにゃん警戒し過ぎじゃない?」  私の右で銃と懐中電灯を構えた朔ちゃんが言う。  「火を付けた煙草をその儘にしておけば自動で煙を出す事は可能よ。または、人質に金魚させる手段もある」  金魚、ニコチンを肺まで吸引しない喫煙方法で、女性がファッションの一環としてそう言った喫煙方法をする場合もある。 それならそれで、未成年者に喫煙を勧誘した本市平次も問題だけど。 部屋からは何も動きが無い、物音一つしない。無駄に対処させて、本人と人質三名は別方向から逃亡する気だわ。 三人で固まって移動したのが失敗だったか。  「朔ちゃん、かずさん…やられてたわ。どうやら本市さんと人質三名は、この付近でなく別の部屋にいるようね。私達を此処で足留めさせる為の陽動だったのよ」  銃と懐中電灯を下に降ろす。  「ええ? 近くにもいないの」  朔ちゃんは肩を落とす。  「急いで他の部屋を当たりましょう」  かず刑事は溜め息混じりにそう言うと、未確認の部屋の捜索を始める。
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