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気が付けばかなりの時間が経っていたらしく、
二限目始まりのチャイムが鳴り響いた瞬間、広田が慌ててその場から立ち上がった。
「あ、やっべぇ。俺のクラス次数学の小テストだわ。もう行くぞ」
「あ、おう」
急ぎ気味に歩く広田の後を、慌てて着いて行く。
そして不意に、津田のことを思い出した。
そういえば。
会った時に話そうと思ってたんだっけ。
大した話じゃないのかもしれないけど、さっきの広田の言葉を聞いた後じゃ
ますます話さなきゃいけない気がした。
些細なことでも、俺だったら気になる。
だから、広田にはそんな気持ちを味合わせたくない。
そう考え、今日のバイトが終わった後、広田の家に行くことを思い付く。
「なぁ広田。今日バイト終わってから家行っていい?」
「ワリ。今日は休みもらってるし迎えには行けねぇからナシな。また今度」
「別に俺は送り迎えとかいらねぇし、」
「…………また今度な?」
ダメだ。
もし黙って夜に広田の家へ行けば、100%怒らせちまう。
仕方なく頷くと、広田はまた前を向いて歩き出した。
しょうがない。
今日のバイト帰り、電話で話すか。
そう考えながら、津田のことはすぐに頭の中から消えて行った。
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