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広田の代わりに忙しく店内を動き回る橋爪さんは、いつも以上にすごく楽しそうに見える。
「すみませ~ん」
「はい、ただいま!」
ニコニコの笑顔で返事をする彼女に、
呼び付けた男性のお客が頬を緩めているのが、手に取るように分かった。
広田と話をする前の俺なら、きっと元気過ぎる彼女に
「広田に関して何かいいことがあったのか!?」なんて考えて、不安になっていたかもしれない。
でも、今の俺は意外と落ち着いていた。
「今日は忙しいね!」
カウンターに戻って来た橋爪さんが、満面の笑みで話しかけて来る。
「そうだね」
簡単に返事だけを返すと、橋爪さんは嬉しそうにコップへ水を注いでいた。
「橋爪ちゃん、超ご機嫌じゃないの。何かあった?」
若干不敵な笑みを浮かべながら喋る島野さんに、橋爪さんが少し照れ笑いのようなものをこぼす。
「えへへ~、実は良いことありました!」
やっぱりあったんだ。
何があったのか気になる俺も、その話を聞きたくて体を寄せた。
「私広田君の家にお見舞いに行ったでしょ?」
やはり広田絡みか、という思いを抱きながらも、顔は努めて冷静さを装う。
「あ!なになに~?まさか寝込み襲っちゃったとか!?」
島野さんの言葉に「やだー!」と嬉しそうに叫ぶ橋爪さん。
つか、黙れ島野さん。
話が進まないだろ。
「本人には会えなかったんですけどね、おばさんが出て来てくれてぇ、家にあがらせてくれたんです」
部屋には入っていないけど、家にはあがったと。
ふーーん。
いや、苛立ってないよ?
ふーーーーーーん。
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