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「僕は、以前二見社長が東川専務に″企画書をスパイに盗ませてかの御仁の会社にダメージを与え、倒産に寸前まで追い込んだ″という言葉を聞いたんです。
一哉さんのお父さんを追い詰めるなんて本当はしたくないことだけど……でも、この事実を警察に話せば、一哉さんと桜の結婚どころの話ではなくなりますよね」
言い終わるとちらちら一哉さんを見た。
「なるほど、確かにな」
一哉さんが頷いた。だが、すぐに眉毛をよせた。
「よく見つけてきたがそれでは駄目だ」
「どういうことですか? 」
何か言いたげな表情に僕は小声で俯く。一哉さんは僕をたしなめるように軽い咳払いを1つ入れた。
「十分な物的証拠がない。それに今、仮に警察に説明して親父や打撃を与えるのは望ましくない。桜の体調面のサポートやお前の祖父の生活もまかなえなくなる恐れがある」
「じゃあ、僕は無意識なことを調べてきただけ、ですか」
自分でもあきれたような声がでる。
すると、一哉さんの口調が変わった。
「いいや。それは違う」
僕の頬に一哉さんの手がぶつかっていた。
「……え、あの」
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