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三枝さんは、片頬をあげて静かに笑っていた。
「これでよかったか、お前は」
考え事をしていて会議室からどう歩いてきたのか僕には覚えていない。一哉さんから、声がかかって初めて車内にいると気がつくと顔を上げた。
「即、親父を警察に引き渡してもよかったが、慧が
枷を繋いで会社で高嶺の為になるよう働かせたほうがすべて丸くおさまると言った。あいつを野放しにしてまた、お前は脅かされないか恐怖を感じないか? 」
刑という形を執行しなくてもこれから二見社長は自分の犯した罪をつぐなっていくだろう。
一哉さんと三枝さんに力を削がれたあの人に今後脅威は感じない。
有るとしたらただ、過去を僕のお母さんを忘れられなかった哀れみだけだ。
そのまま一哉さんに伝えたら甘いと怒られるかもしれない。
「いいえ」
僕が首をふる。
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