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「三枝で、ごさいますか? 」
お姉さんが隣の人に目配りしている。
よく見ればこの前来た時に会った受付のお姉さんより随分若いお姉さんだ。まだ、秘書の三枝さんの名前までは把握していないのかもしれない。
「ええ、二見さんです。社長秘書の。顔はいいのにこんな風に目つきが悪くて。皮肉な笑いをする狐みたいな人です」
指で眉を引っ張りながら、説明すると少し嫌っている気持ちが顔にでたのであろう。受付嬢はクスッと笑って、
「お客様がお会いしたい相手はすぐ近くにいるかもしれませんね」
「高嶺君、君は私のことを狐だと思っていたのですね」
背後から、声がかかった。僕は文字どおり肩を飛び上がらせて慌てて振り向いた。
後ろを振り向くと三枝さんがにこにこと笑いながら立っていた。
鋭い眼光を投げかけられている。心底笑っていないことが手に取るようにわかった。
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