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「あの、狐っていうのは言葉のあやで」
軽く頭を下げると僕を残して三枝さんがエレベーターホール歩いていった。
「ちょ、ちょっと。待ってください。
三枝さん!!」
背後から、三枝さんの右手を掴む。そのままエレベーターの反対側の身を隠せる廊下の階段を上がった。階段は外装に気を使っておらずおそらく非常用なのだろう。
人目につく心配はなさそうだった。
「軽々しく手を握らないで下さい。私にはまだ仕事が残っているのですよ」
「でも、ついてきたんだから、話聞いてくれますよね」
「何を根拠に」
「だって、力ずくだと僕の体格で三枝さんに勝てるわけがないから」
僕は反論し見上げる。
「頭が悪い、回答ですね」
三枝さんが鼻で笑うと踊り場の床に座り
腕時計を確認した。
「まあいい。10分だけ、君に時間をあたえましょう。私に何の用です?」
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