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僕は持っていたコートを両手で押さえた。
「今まで、一哉さんを二見社長から護ってきたのは貴方ですよね」
三枝さんが眉を寄せて僕の方を向いた。何を言い出すんだ、と言いたげな表情だった。
「君、頭でも狂ったんですか」
「悪いけど、三枝さんの言葉に動じている暇はありません。10分しか時間もらえなかったんですから」
一度口をつぐむと息を吐いた。
「一哉さんが三枝さんとの関係を教えてくれたんです。叔父と甥の関係だって。
聞いていて思ったんです。
一哉さんは、三枝さんのこと心底嫌っていない。
これは僕の想像にすぎないけど、貴方は一哉さんのお母さんが亡くなった時、自分もどうすべきか悩んでしまったんじゃないですか。
答えがでないまま一哉さんを気にかける余裕がなかった。だから、無関心を装った。
そんな中、一哉さんは一人で苦悩にひたりこみ、距離を置くようになった。
貴方は、そのことを後悔しているから、一哉さんのこと気にかけている違いますか?」
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