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そうであって欲しいという僕の願望だった。
緊張に似た感情で視線が定まらなくなる。
しばらくして、高らかに三枝さんの笑い声が聞こえた。
「なるほど、高嶺君。君は外見とは裏腹に熱血漢溢れる人らしい、でも、馬鹿ですね」
僕は身をふるわせた。
馬鹿にされた口調にむなしい怒りを覚えると、口をつぐんだ。
三枝さんが一哉さんの力になってくれると信じた。僕の考えは間違いだったのだろうかと、呆然と立ち尽くす。三枝さんが動く気配がした。
右手で眼鏡を外したのがわかった。
「一哉を護っているつもりはありませんよ、私は」
「え?」
「ただ、7年前の姉さんの最後の願いを叶えてあげているだけです。それ以外、私が動いている理由はない。無為に人に期待だけしないで下さい。君の味方ではないですから」
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