最終決着

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「何をです?」 三枝さんは、人目につくのをよしとしないのか言葉を短くきり、僕に訊ねた。 僕は、なんの屈辱も感じず、顔をあげた。 「一哉さんに協力してあげて下さい。それが無理ならこの先、僕が一哉さんが一緒にいられないことがあったら貴方だけは一哉さんの味方であって下さい。けして、一人にしないであげて下さい」 「何を馬鹿なことを」 「馬鹿なことじゃありません。僕には真剣に頼んでいるんです」 淡々といつも通りに喋っているはずなのに、三枝さんが霞んでくる。 自分が涙ぐんでいるのだとわかった時、目の前からため息が漏れた。 「おしゃべりは、おしまいにしなさい。社長が会議を終えてもうすぐここにくる。鉢合わせするのはよくないでしょう」 三枝さんが着ていたスーツのジャケットを脱ぐと僕の頭からかけた。
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