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「あの、僕。何かことをしましたか?」
一哉さんは、首を振った。
「いいや、気に触るというのなら俺の方だ」
「え? 」
「お前を窮地に追い込んでいるのは俺の親父だ。なのに問題を解決しないまま触れようとするなんてな。どうかしてる」
一哉さんは乾いた笑いをあげ、無益の世界に入りこんだようだ。立ち上がり、自室の方へ向かおうとしていた。
僕は慌てて制止した。
「ちょっと、待って一哉さん!!」
視界の片隅に白いふわふわした雪片が見える。
ここの所、二見社長にどう対抗するべきかずっと考えて季節感なんて全くなかった。
クリスマス、お正月も恋人らしいロマンチックなことなんてなかった。
こういう時、嘘をつかず素直になるべきだ。
「ぼ……僕はっ……! この資料だけを見てもらいにきたわけじゃないんです」
「え? 」
「お……女の子の格好じゃないと優しく触れてはもらえませんか?」
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