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「なるほど、ならいい」
一哉さんは内ポケットから白地に蝶の刺繍がはいったハンカチをとりだす。冴えないため息を吐きそのままハンドルに顔を伏せた。
身を震わせている姿をみて僕はショックだった。
一哉さんにとっては唯一の家族であった二見社長と今日、縁を切ったに等しい。
僕もお母さんやお父さんを小さい頃に亡くしたけど
今も桜やお祖父様が側にいる。
どんなに憎んでいてもかけがえのないものを一哉さんに失わせてしまった気がする。
僕は、この日のことを記憶の一頁に刻んでこれから先忘れないと思う。
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