エピローグ

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確信に満ちた口調で一哉さんが話し出した。 「あの夜は、俺の担当していた患者の容体が急に悪くなって自分の不甲斐なさに絶望していた所だった。お前がタイミングよくマンションにきて、急に人肌が少し恋しくなっただけだ。それ以上なんの気持ちはない」 確かにあの日一哉さんは酔っぱらっていた。 一哉さんはお母さんのことがあってから、患者さんが急変し、生死をさ迷う局面になると精神的に脆くなることがある。 僕に甘えてきてくれたのはわかっている。 嬉しいけど、あの日から僕の体は少し可笑しい。 むず痒いというか、一哉さんに身体に触れられると今まで熱を帯びたこともなかった部分が火照ってくることがある。 今まで抱きしめられても鼓動が走るだけだったのにこれって、一種の体の病気じゃないかな? 原因がちゃんとわかるまで一哉さんから離れないといけない。触られてバレるのは恥ずかしいし、駄目だ。
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