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「気をつけて帰っ……」
言いかけているところを、いきなり口で口を塞がれた。
ど……どうして……。
くっ……クラクラする……。
あまりの快感に苦しくなって恍惚として目を閉じた。
温かい……心地よい……。
どうして……一十瀬君も私を好きなの……?
唇がゆっくり離れる。
「では」
そう言って微笑む一十瀬君に違和感を感じた。
なんだろう……意地の悪い微笑み方をしてる……一十瀬君。
これって……。
「ね……ぇ……今のって……口封じの……つも……り……?」
何にも好意の無い、演技のキスだったの……?
一十瀬君が目を見開く。
私の目から涙が次から次へと滴り落ちる。
「口封じ……でしょ?」
苦しい。
一瞬でも心が通い合ったと信じた私がバカだった。
苦しい。
痛い。
悔しい。
私は手の平で涙を拭った。
そして一十瀬君の胸に飛び込んで一十瀬君を抱き締めた。
「私、好きだよ。一十瀬君が好きだよ!!」
一十瀬君は黙っている。
完璧ウザい女だ……私……。
「僕は……あなたに恋愛感情はありませんが……共犯者としてなら……いつでもあなたと一緒に居ます」
一十瀬君が優しく私の頭を撫でる。
涙が止まらなかった。
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