第1章

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アパートに着いた私は、玄関のドアを閉めた瞬間、安堵して深く息を吐いた。 よし、箪笥の一番下の段に……。 箪笥に閉まってから、ふと思った。 もし仮に誰かが箪笥を開けたとしたら……。 血まみれの刀を見たらどう思うかしら。 私は急いで刀取り出し、お風呂場へ刀を持って行った。 温水のシャワーを、鞘から取り出した刀にかける。 立派な刀……。 高そうだな……。 ふと気になった。 本当に一十瀬君はあの男達を殺してないのだろうか。 本当は殺していて、私に嘘をついただけではないか? 気になる。 もし殺人を犯していたら、テレビのニュースに出ているはず。 テレビを見てみようか。 いや、さっきの現場に行くのが一番早い。 目撃者が居るだろうから、少し服装と髪型を変えて行こう。 マスクもつけて行こう。 私は服を着替え、髪をアップのおだんごにし、マスクをつけて、持つバッグを別のものにし、アパートを出た。 ――死んでないで。 死んでないで。死んでないで。死んでないで!! お願い!! 一十瀬君が殺人を犯したなど考えたくもない!! 私はいつの間にか走っていた。 人だかりができている。 さっき、私が絡まれ、一十瀬君が私を守るために男達を斬った場所……。 パトカーが近くに止まっている。 走ってきたの怪しまれちゃったかな……? ゆっくりと歩いて人だかりに紛れ込む。 ざわざわと人々が言葉を交わしている。 「あんた見た?犯人」 「見ない。誰かしら。物騒ねぇ」 「チンピラはやられても当然じゃん?なんか悪さしたのかもね」 「お前犯人かよ?」 「は?違ぇし」 私は人混みを掻き分け、最前列に来てみた。 あれ? 男共が居ない。 現場検証のテープが張り巡らされている。 そっか……病院に運ばれたんだろうな。 斬られたんだもん。 怪我してるよね。 「あの……死んじゃったんですか?」 近くに居た警官に訊いてみた。 「ん?さぁ、救急車で運ばれた様子だから、大丈夫なんじゃないかね」 警官はそう言うと、 「あんまり近づかないでください、テープから中は入っちゃダメですよ」 と言った。 私は人混みを掻き分け外に出た。 良かっ……た……。 死んでいないんだ……。 少しだけ涙が溢れ出した。
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