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アパートに着いた私は、玄関のドアを閉めた瞬間、安堵して深く息を吐いた。
よし、箪笥の一番下の段に……。
箪笥に閉まってから、ふと思った。
もし仮に誰かが箪笥を開けたとしたら……。
血まみれの刀を見たらどう思うかしら。
私は急いで刀取り出し、お風呂場へ刀を持って行った。
温水のシャワーを、鞘から取り出した刀にかける。
立派な刀……。
高そうだな……。
ふと気になった。
本当に一十瀬君はあの男達を殺してないのだろうか。
本当は殺していて、私に嘘をついただけではないか?
気になる。
もし殺人を犯していたら、テレビのニュースに出ているはず。
テレビを見てみようか。
いや、さっきの現場に行くのが一番早い。
目撃者が居るだろうから、少し服装と髪型を変えて行こう。
マスクもつけて行こう。
私は服を着替え、髪をアップのおだんごにし、マスクをつけて、持つバッグを別のものにし、アパートを出た。
――死んでないで。
死んでないで。死んでないで。死んでないで!!
お願い!!
一十瀬君が殺人を犯したなど考えたくもない!!
私はいつの間にか走っていた。
人だかりができている。
さっき、私が絡まれ、一十瀬君が私を守るために男達を斬った場所……。
パトカーが近くに止まっている。
走ってきたの怪しまれちゃったかな……?
ゆっくりと歩いて人だかりに紛れ込む。
ざわざわと人々が言葉を交わしている。
「あんた見た?犯人」
「見ない。誰かしら。物騒ねぇ」
「チンピラはやられても当然じゃん?なんか悪さしたのかもね」
「お前犯人かよ?」
「は?違ぇし」
私は人混みを掻き分け、最前列に来てみた。
あれ?
男共が居ない。
現場検証のテープが張り巡らされている。
そっか……病院に運ばれたんだろうな。
斬られたんだもん。
怪我してるよね。
「あの……死んじゃったんですか?」
近くに居た警官に訊いてみた。
「ん?さぁ、救急車で運ばれた様子だから、大丈夫なんじゃないかね」
警官はそう言うと、
「あんまり近づかないでください、テープから中は入っちゃダメですよ」
と言った。
私は人混みを掻き分け外に出た。
良かっ……た……。
死んでいないんだ……。
少しだけ涙が溢れ出した。
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