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「え?ああ、僕は普段着に着替えただけですよ。変装したつもりはありません」
「そうなんだ」
「あんまり警察をチラチラ見たから僕怪しまれたかも。あはは」
「一十瀬君って……明るいね」
「そうですか?あなたはそうじゃないんですか?」
爽やかに優しく言う一十瀬君。
ドキッとしてしまった。
「えーと……本当に……殺してないでしょうね?」
声を潜めて一十瀬君に訊く。
「殺してませんよ」
一十瀬君がにこやかに言う。
「刀、洗っておいたので」
「そうですか。ありがとうございます」
「一十瀬君って……道場抜け出して来たんでしょ。道着で。真っ先に疑われるんじゃ……」
「今日だけ天然装いました。おっ先~って感じで、着替えるの忘れた子みたいに帰るふりを演じてあなたの元に駆け付けた」
ドキッ。
ヤバい。なんかときめく。
「あっ、でも、助けたのはあなただけじゃありませんよ。この辺はチンピラとか変質者よく出るので、木刀で倒して女の子や女性を守ったのは何回もあります」
……え……。
私だけじゃないんだ……。
なんかショック……。
「けど今回は木刀忘れて……手元にあった真剣でつい……。真剣で斬ったのも救った女性に共犯者になれって言ったのも初めてですよ。ドキドキしたぁ」
無邪気に明るく言う一十瀬君にまた心臓が高鳴る。
「あの……一十瀬君。私……まだ夕食食べてないんだ。あなたは?」
「僕?僕もまだですよ」
「えっと……そこに寄って行かない?」
目の前にあるラーメン屋を指差す私。
わ……我ながら大胆!!
男性を食事に誘ったの初めてだ!!
「えっと……僕お金持ってきてません……」
「私、おごるから!!」
「んー……んー……では今回だけお言葉に甘えさせていただきます」
「ありがとう」
「え?なんでありがとうって言うんです?ありがとうございますはこちらの台詞ですよ」
くすっと微笑む一十瀬君。
ヤバい。
可愛い。
私……どうしちゃったんだろ……男子相手にこんな気持ちになるなんて……。
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