第1章

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「ご馳走様でした」 店を後にして私と一十瀬君は私のアパートへ向かった。 「本当にありがとうございました」 一十瀬君が私に礼を言う。 「いえいえ。またおごって欲しかったら言ってね」 「あなたに悪いですよ。今度は僕におごらせてください」 えっ……。 これも信頼関係を深めるための……言葉……なのかな。 「いいよいいよおごってもらわなくても」 「そうですか?いつでも言ってくださいね」 一十瀬君が微笑む。 心臓がドキドキして体に悪い。 これって……。 恋なのかな……? 恋なんてもうしないと決めていたのに……。 「どうなさいました?」 一十瀬君が私の顔を覗き込む。 ハッと赤面する私。 「あ、ここ、ここだよ」 いつの間にか私のアパートの前に来ていた。 アパートの鍵を開け、 「どうぞ上がって」 と一十瀬君を家の中に招いた。 箪笥の中から刀を取り出し一十瀬君に手渡す。 「ありがとうございます」 一十瀬君が微笑む。 「もう真剣振り回しちゃダメだよ?木刀にしてね」 「はははっ解りました」 私は玄関に向かう一十瀬君について行った。
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