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「は、はぁ? 告げ口だぁ、俺が」
何を言われているのかわからないと言った感じで中年男が表情をゆがめた、手元にあるナイフを強く握りしめながら、
「したんだろ。告げ口されたぜ。あんた、数人の女の子と関係をもってそのことで脅して、金をせしめてるんだろ?」
ヒッヒィィイと中年男が頭を抱え、手元にあるナイフの切っ先を見てはさらに怯えた。
「……だっ、誰だ、そんな告げ口したのは俺は愛してるんだ。ただ一人だけじゃ満足できないんだ。そうだろう、俺は誰だって愛してるんだ」
「それなら、これがあんたの愛した結果かよ」
と一枚の写真を中年男に見せた、さーっと青ざめていく男が見つめる写真には全身を殴られた死亡した少女の写真があった。
「あんたが殺したんだよなぁ。殺して、そのまま放置して逃げたんだよなぁ」
告げ口があった。友達がたちの悪い男に惚れ込んでいて金を奪われた挙げ句に殺されたらしいのだと、
「ちっ、違う、俺じゃない、俺はこんなことしてない!! そもそも誰だ、その女は…………」
言い逃れしようとする中年男の蹴り飛ばし背中を向けたところを膝で押さえつけて片腕を握る。
「嘘つきとは感心しないなぁ」
ぼきっと腕があらぬ方向に折れ曲がり、骨が悲鳴をあげた。中年男も骨に折れた激痛に苦悶の声音を上げだ。まぁ、どんなことでもいいのだ。この男があの少女を殺していようが、殺していまいがどちらでもいい。
「崖っぷちだよな。一度、落ちたらもう二度と這い上がれない。奈落に落ちればもう戻れない」
ミシリ、ミシリッと腕を捻る、中年男が泡を吹いて折れていない手をバタバタと手足を動かした。ヒィヒィとあえぎ声が耳障りだ。黙れ、捻った。黙った。
「たしゅ、たしゅ、たしゅけて」
「お前がその言葉を聞いた時、お前はどうした? 泣き叫ぶ女の子が助けてと泣き叫ぶときどうしてた、あぁ? 証拠はいくらでもあるんだよ」
獅子心中の虫、この世界は獅子の腹の中だ。腹の中には毒虫が詰まってる。痛みで泣き叫ぶこともできない中年男はもう言葉も発さない。
「死ねよ。毒虫」
ナイフで一閃、血飛沫が散った。
「ありがとう」
と物陰から声がした、俺は血まみれの髪の毛をかきあげながらそちらを睨みつけた。告げ口してきた奴、依頼人だった。
「礼なんていらない、俺は金をもらってやってるだけだそんなこと言う暇があったら友達の墓前に話す言葉を考えていろ」
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