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01
夜もふけて満月の下。星が瞬く夜空を天蓋にして私たちは立っていた。
まさかこんな、ドがつくほどの田舎に派遣されるとは思わなかった。
しかも『標的』は三体と来た。よくいままでほったらかされていたもんだ。
廃村で人の子ひとりいないここでなら思いっきり鎌を振るえるだろうとも思う。練習にはうってつけである。
「あー、行くぞ、新人くん」
私は隣に声をかける。彼は死神のライセンスを取り立てで今日が初陣なのだった。私はなかば押しつけられるかたちで彼の初仕事につき添うこととなった。
彼の姿を目にして初心を取りもどせなんていう意図も見え隠れしていたが、私はそんなもん気にしない。
そもそも取りもどすべき初心なんて閻魔さんだって覚えちゃいねーに決まってる。私の初陣だってもう忘れたよ。そもそも私たちは最初からレベル100なのだ。パラメータはカンストしているのである。
能力上限マックスで初めて資格を与えられる。それが死神なんだよ。
だから本当は私がつき添うまでもないんだけど、どうにもこいつには度胸が足りないらしい。
いまだって、自分の背丈を超える長い鎌を保持する基本姿勢も忘れ、やる気のない綱引きみたいな格好でぶら下げている。
ちなみに基本姿勢では利き手と反対の手を柄へ逆手に添え、腕に添わせて肩にのせるのが正しい。その際に刃は背中側にする。添わせた腕の角度までこまかく決まっていたが、お偉いさんはよっぽど暇なんだろうな。
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