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 左半身気味で腰を落とし、ゆるく握った左拳を水月の高さへ身体から離して力は込めすぎないよう意識する。右手は鎌の柄を薬指、小指で握り、他の三本は添える程度、鎌は肩に載せ地面と水平に。攻撃時は腕を下げ肩で跳ねて縦に円を描くように振り切る。  短く持った鎌と狭い攻撃範囲はすぐに防御姿勢を取れることを意味する。  臆病だと笑ってくれるな、どんな手練でも未知の相手には慎重になる。  ――森の奥から現れたそいつは三十面体のサイコロを押し潰したみたいなかたちだった。  高さ一・五メートル、幅二メートルぐらいのその全体は黒く光沢すらある。もやもやとした感じがまったくない。 「キナさ――っ!」  かけようとした声は途切れる、そいつがこちらに飛びかかってきたからで、目測二十メートルを打ち出されたみたいに一気に詰める。  私の間合いに入る前に果敢にも新人くんは一歩踏み出してそれに刃を合わせた。振るわれた袈裟斬りの刃圧が放たれる間際、進行方向の十個ほどの菱形がきらりと光ったように見え、
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