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 直後、新人くんが放った刃圧は数多の棘にかき消された。  ウニめいたトゲが十本ほど伸びて刃圧から斬れ味を分散する、棘饅頭(いま命名)も勢いを殺されその場に落下。 「な、あ、あれ~?」 「どけ!」  背後を示して叫ぶと構えを解く。棘饅頭との距離は私の歩幅で六歩分。  あんなもん素手で殴っていられん。  だらけた綱引きから利き手側に刃を寄せた下段の構え。そのまま身をかがめながら踏み出した右足に荷重を集中して地をえぐらんばかりに駆けだす。  六歩分を三歩で間合いに飛び込み、同時、棘饅頭の菱形のひとつが光る。  私の刃の届く速さが勝った。  横っ面にぶち当たった刃はしかしそれを両断するに至らない。地面から離れる棘饅頭は衝撃に横に吹っ飛ばされていく最中であり、その光景をコマ送りで目に焼きつける。  ようやく三十センチほど地面から離れ、硬質な感触が手に残って、わずかに散った棘饅頭の破片を目にする。  眺めている場合ではなかった。  射出された棘がわき腹をかすめる。  ――遅々としていた時の経過が本来のそれにもどる。  ごろごろと転がる音を耳にしながら汗腺の開ききった背中に汗がにじむのを感じる。  同時、左のわき腹部分が破れた黄色いカーディガンと白いブラウスに血液を模倣する霊的物質がにじむ。
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