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「おいおい」
攻撃受けたのにお構いなしで反撃かよ。そもそもなんつー硬さだ。
ころがった先で静止した棘饅頭は私が砕いた箇所から黒いもやを煙のように立ち昇らせている。まったくのノーダメージではなさそうだし力技でなんとかなるのがわかっただけでも収穫だった。
さて、どうやってその力を発生させるかだ。
いや、待てよ。力技でダメージを与えられるとはいえ、完全に戦闘不能にするまでにはどれほどの時間がかかるのだろう。こちらの攻撃には無頓着で反撃してくるのだ。
いまの私の一撃だって相当に本気だったのに、あの程度の損傷にしかならない。
守りを考えた半端な攻撃では傷ひとつだってつかないだろう。
なにげなく見やったら刃が欠けている。
信じられない。これまで一度だってなかった。けっして欠けないと思っていたのに、こんなことが起こるのか。
このままあれを斬りつけつづけでもしたら、しまいには単に鉄クズでぶっ叩いているだけになってしまうだろう。
――――ふむ、悪くないかもしれない。
「キナさんっ、大丈夫ですかっ!?」
新人くんが私のわき腹にそそぐ視線をわずらわしく思う。それが顔面に移り、不思議そうな顔をされた。
私は笑みを浮かべていた。
「こんなもんツバつけときゃ治る。それよりも、だ」
私は新人くんを屈ませるとその耳もとに口を寄せ、思いつきをささやいた。
最初からレベル100なのだ、なんて思っていたのは間違いだ。
死神は人間にくらべて初期能力値が高いだけにすぎない。その能力が衰えることもあるし、さらに盛りあがることもあるのだ。
死神として、なん百年をすごしたかも不明瞭な私がいまさらに、進化できる喜びを感じている。
新人くんとふたりがかりで恐縮だがね、棘饅頭よ。
私たちはお前を倒せるぞ。
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