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「わっ!」  棘が新人くんの左頬をかすめる。サイドステップで右へ飛びのくが狙ったように二本目。 「わばっ!」  出足の膝を貫かれそうになって今度は背後に飛ぶ。追うように三本目。 「わぶぁっ!」  胸の先数センチで射程から逃れて、新人くんは息をあげながらゆっくりと鎌を持ちなおす。  袈裟の構えで駆け込むと同時、棘饅頭もとんできて、不意に詰まりすぎた間合いは棘饅頭が体当たりを仕掛けたようにも見えた。  その菱形の三つがきらめく。だがすでに鼻先に届きそうで袈裟斬りはどうしたって当たらない。  新人くんは前進をとめると袈裟斬りの構えを解く。身体の前で得物を水平にし、とことんまで短く持った鎌に逆手の右腕を直角に曲げあてがい、刃を肘の延長にする。  身をひねり肘を振るい、最小レンジで斬りつけた。  棘饅頭は横に吹き飛び三本トゲを出したまま地をすべる。  とっさにしては上出来だ。  新人くんがこちらを見あげる。  合った視線に、何みてんだ気づかれるだろうがあほ、と内心の罵倒を込めて睨みを返すとふたたび棘饅頭と対峙する。  新人くんはノーダメージだったことにもひるまずに棘饅頭に向かう。
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