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 斬ること以外、なにもできはしないのだ。  斬ることがイコール救うことにならない今回のような場合ではそれをいやというほど理解させられる。  どうすればさっきの悪霊を救えたかを考えるのはもっと偉いやつに任せて、結局のところ私は斬るしかないのだと思う。  そして今夜最後の『標的』の気配はすでに察知していた。  かすかすぎて棘饅頭の気配に食われていた、その微弱なそよ風みたいな気配は森のなかから漂ってきていて、新人くんは夜の森の不気味さに身を震わせる。 「な、なんか出そうな感じですね……」 「悪霊ぶったぎっといてこれ以上なにを怖がるってんだよお前は」 「あ、ああ、たしかに言われてみればっ!」 「そもそもお前は死神だからな?」  どちらかといえば、出そうな感じってかすでに私たちが『ここに出ている』ことになる。  一応は霊体だからな。 「そうでしたねえ」  ともに道なき道を歩きながら、隣で間抜けに納得するのを聞いたときだった。  ――思えば、いくら気配の漂うほうに近づいても、それが濃くならないことを疑問に感じてしかるべきだったのだ。結果、私は不用意にそいつに近づいてしまっていた。  反応の遅れは致命的だった。
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