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木陰から飛び出した、猫サイズの『標的』は私のわき腹――ひらいた傷口にその身体をねじ込む。流出が止まっていた血液がふたたびあふれ出す。
「ぐっ、ぬあっあ、ああ!?」
どういうことだなんだこれはどうした一体こんなことがあるのかこんなん聞いてねーぞ!!
外殻のヒビから侵入され薄皮を破り中身を撹拌されるみたいな圧倒的な不快感に身をよじる。
混ぜてはならないものが混ざっていく。私の中身がかき回され、さらに侵入者がそのどろどろとした私自身にとけていく。
張りぼてみたいに表面だけがかたちを保っていて、もう中身はぐちゃぐちゃになってしまったのではないかとぞっとする。狭くなる視界に辛うじて見えた傷口からあふれる赤に、それは間違いだと教えられた。
その赤はまだ、血液の赤だった。
霊体はまだ人間をかたどれている。侵されているのは霊体にやどる私という意識のみ。
膝をつく。
身を折る。
鎌を手放し、両手を伸ばして地面に突っぱる。
「う、うぇえぇぇ――――、アァァァァァァァァァアァァァアァァアァッ!!」
吐こうとしたのに、私の口を使って私以外の誰かが声を押し出す。力まかせの絶叫が耳に痛い。
ああ、乗っ取られる。
ふざけるな。
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