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ぶっちゃけ、基本姿勢だろうがだらけた綱引きだろうが持ちかたひとつで斬れ味が変わるなんてことはないのだ。
強いて言えば基本姿勢が意味するのは心の準備にほかならない。これから敵と戦うということを身体に自覚させるくらいの意味しかない。それでパフォーマンスが向上すればよし、しかし、この新人は意識したら意識しただけ身体が固くなりそうだった。
いまだって私がかけた声は聞こえていない。まるっきり棒立ちだった。
私たちをここまで専用の乗り物『金斗雲』で運んでくれた担当の仙人はすでに飛び去ってしまった。もう一度新人くんに声をかける。
「おーい、行くぞっての」
ぼけーっと前を見ていた顔が急にこちらを向く。高校生風の少年は整った顔をしている。見ていて不愉快にはならない。着ているのはスーツでありネクタイはしておらず見習いホストみたいな優男だった。
「あ、キナさん~、おはようございます~、今日も野性味あふれていて素敵ですねぇ~」
「はいはいありがとよ。つかあいさつなら移動前にもしたぞ、大丈夫か」
「大丈夫ですよぉ、いきましょ~」
不安だ。
だが仕方ない。これも任務であって仕事なのだ。
誰の仕事かって?
『天国門通行許可手続きセンター』『強制執行課』所属の局員、
私たち『死神』のだよ。
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