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 電灯なんてあるわけがないので周辺は当然のように暗い。それでも夜目が利いてきたのもあって景色は見て取れた。  立ちならぶ、かやぶき屋根の民家は両手の指で足りる程度の数で、しかし『標的』の気配はひとつしかない。  ほかは捜しまわらなきゃならんかもな、と面倒に思いつつ背後に新人を従えて手近な民家の戸を、  蹴破る。 「うわぁっなにしてるんですか!」  背後に降りかかる素っ頓狂な声に私は振り向いては苦笑いをかえす。 「見りゃわかんだろ?」 「器物損壊罪ですよ!」 「たとえ頭に『死』がついていようとも仮にも『神』を裁こうだなんて法はねーよ。第一、このボロ屋の戸がなくなったところで誰も困らないし、自然に朽ちるのも時間の問題だった。ごたごた抜かすな新人くん」  舞いあがるホコリが、ここは人の手が触れていない場所だと声高に叫んでいる。  私のことばに釈然としないながらも新人くんは口を結ぶ。そう、ここで言い争っても詮ないことだ。  反論せず沈黙を選んだ彼の判断にうなずきを返して家屋を覗き込む。家捜しするまでもなくここではないと直感に教えられる。 「つぎだ」
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