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 ボトルに収まっているのは死んでしまったものの未練を残し霊体となって、仙人どもの説得にも応じずにこの世にながく留まる個体であり、もともとは人間のタマシイである。その満たされることのない想いによどんだ霊体が、現世に漂う負の感情まで吸収して悪霊と化してしまったのだ。  私たち死神はそいつを斬ることにより無力化し拘束して天国の門へと連れていく。乱暴なように聞こえるが、悪霊になるまで居座っても満たされない想いにはすっぱり諦めてもらうほかない。  余談だが、悪霊化したタマシイはさまざまな病魔のたまり場になることがある。たくさんの人間が暮らす都会では近づいただけで気分が悪くなるほどの病魔どもの集会所もざらだ。  こんな廃村ならそういう被害もなかろうし病魔そのものも少ない。人の迷惑になっていない無人の地域であれば、好きなだけ現世に留めておけばいいじゃないか、という【生者本位論者】もいるが個人的には賛同しかねる。  やはり私たちが相対するべきは生者より死者であるべきだろう。  死者である悪霊のことを考えれば強引にでも天国に送り、生まれ変わるという選択肢を示してあげるべきなのだ。 【生者本位】のやつらはそれがわかっていない。  私たちはそうやって死者を救うしかないのに。  新人くんのベルトにくくった紐の先で揺れるボトルに視線を落としながらそんなことを思った。
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