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「どうしましょうキナさん……」  隣とそろって足をとめる。眼前には森があり、民家はもうなさそうだった。 「とりあえず進んでみ」るか? と問いかけようとしたが、それを私は飲みこんだ。  羽毛布団を全身に押しつけられたような圧力を感じた。隣でも唖然と口をひらいているのを見て気のせいではないと確信する。いまもつづくこの圧力の正体はおそらく、悪霊の放つ気配だ。  ただ、濃度が高すぎて進むのをためらいそうになるレベルである。  突然に放たれたそれに新人くんは苦々しい笑いを浮かべる。 「どうしましょう……?」  くり返される台詞だが、今度は言外に、引き返したいという思いがにじむ。  たしかにこれは警告みたいだった。私たちの接近に気づいた悪霊が全力で威嚇しているのだ。  しかし引き返すわけにもいかんだろうよ。 「腹くくれ」  それだけ告げて一歩、踏み出す。  布団どころの騒ぎではなかった。  こちらの動きに、完全に反応して今度は迫ってくるのが全身で理解できた。  暴風のような気配に乱雑になでまわされる。肌をやすられるような悪寒に包まれながら基本姿勢から戦闘体勢に移る。
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