飛びたかったのだ、落ちたいのではない。

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少女は帰宅した。考える。鋏片手に、長い髪を切った。母が帰って来たので、髪を纏めて塵箱に少女は押し込む。翼はどうしたら良いのか。自室から折り紙を数十枚集めた。宿題と画用紙を集める。リビングで新聞紙を集めた。トイレからトイレットペーパーを五メートル集めた。母は訪ねたが、飛びたいのだと答えた。数回少女は頷き、自室から本を集めた。鋏で鋏んで、鋏で鋏んで刻み切ってばらして解して、集めて貼って、一対の翼を作る。 今度はなるべく鳥を真似た。一時間要した。背中にガムテープで張り付け、肩を回し、屈伸運動した。意気込み、床を少女は蹴る。滑る。走る。進む。跳ぶ。柵を越え、身体を捻る。そうすると向かいのマンションを避けれて、漸く少女は飛べた。飛びたかったのだ。飛べたのだ。 少女は両手を広げて空を飛んだのだ。そして少女は帰宅した。もう満足して、ベッドに俯せに転がった。背中には翼はあった。
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