第2章 

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第2章 

そう・・・・さっそく、俺は 心当たりの ある男にアポをとった。 その男は、 川崎の築30年の寂れたマンションに 住んでいた。 山瀬・・・彼こそ、 モモヨの元のマネージャー、 彼女を育てた男。 しかも最後のステージで引退を 見守った最後のマネージャーでもある。 「なるほど・・ 引退の日を再現ですか・・・・ いいですね。 彼女はもう伝説ですからね・・・ 彼女のためなら協力したい。」 落ち着いた低音の声で、山瀬は協力を約束してくれた。 まあ中森○菜など見ていてもそうだが、 天岩戸に隠れてしまったスターは、 復活説を出すたび話題となり、アルバムが売れる。 そのたび、何千万もの印税が振り込まれ、スターは生き延びる。 だが、大抵は、歳をとり、音域も狭まり、その実力は劣化、カラオケ名人以下の歌唱力になってしまう。 あたりまえだ。 なんせ普段、歌っていないのだから。 そう言う意味でも、モモヨについては 本人は出演しない。 だから、マネジャーにとっても気が楽。 2日後、彼のマンションを訪ねることになった。 俺は、昼間の静かなマンションの廊下で さっそく、呼び鈴を鳴らした。  「ピンポン、ピンポン、ピンポン」  「・・・・・・・・」 「ピンポン、ピンポン」 今はマンションに誰かの生活音もない ただ廊下に響きわたる呼び鈴・・・・  「・・・・・・・・」 だが返事はない。 それより、気配がしない・・・・ 妙だ・・・・・ 恐る恐るドアに手をかけてみる・・・ 鍵が開いている。 こういう時は、 2時間ドラマだと、 大抵、死体が転がっている。 これはまずいぞ・・・と思い、 ハンカチで指紋がつかないように ドアを開けてみた。 死体的なものが、転がっている前提だ。 「山瀬さん・・・・」 「・・・・」 「や、山瀬さん・・・・」 「・・・・」 返事がない。 これはいよいよ死体とご対面かな・・・・恐る恐る進んでみる。 リビングに入っても、人気はしない。 寝室に入っても・・・やはり人はいない・・・・ 書斎が見えた。 業界人だけに、 あそこに資料がたっぷりあるはず・・・・・ ところが、なんと机が一つで、 本棚には本が一冊もなかった。 俺は、逃げたな・・・と思った。
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