第 7 章

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                 「あなたの人生は、美しいですか?」 そのCMを、時代の寵児、田村信一郎 =通称タムシンは、 「ああ、それなりに美しいかも… 他の人に比べれば 」 と思いながら、 六本木ヒルズの最上階で、 新発売のアルカリ水を飲んでいた。 やることが時代の流れに乗ると、 ここまで金になるとは 最初は思っていなかった。 金を手にした彼が 自分に求め始めた事が、 ビューティフルな人生。 彼にとって、かって自分が育った 山村は、汚いものであり 今住んでいる高級マンションの ペントハウスはビューティフル。 かってのカップヌードルや菓子パンで たるんだお腹や、 三日に一度しか洗わない長髪は 汚いもので、 ジムで鍛えあげわれた腹筋や 老舗のハーバーで手入れされた髪が ビューティフルなのだ。 そう、彼はソウルを売り、 ビューティフルを求めていた。
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