第2章

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ここまでくれば大丈夫かな。 乱れる呼吸をなんとか落ち着かせる。滴る汗が僕から離れてアスファルトに弾けた。 「わあ、メガネが」 どうやら僕の熱気で曇ってしまったらしい。メガネのレンズが真っ白で前が見えなくなっていた。僕の必死さがよく分かって頂けただろうか。 今日は朝から災難だったな。……財布……まあいいか、命より大事な物なんてない。うん。 これさえあれば、それでいい。 僕はそれを暫く眺めた後、そっと鞄にしまった。 教室には既に結構な人数がいた。にも関わらず、誰とも挨拶を交わすことのない僕。いじめられてる僕に関わりたい人なんていないだろう。 僕がいじめられてるのは学年中に広まっているので、クラス外にも友達はいない。……自分で言って少し傷付いてしまった。 外の景色でも見て、心を癒そう。 運良く窓側の席になった僕。なんだかんだ言って、初めて窓側の席につけたから嬉しい。小さな幸せを噛み締めながら窓を開ければ、心地よい風が頬をなで、優しい光が僕を出迎えてくれた。 目を細め、遠くの景色を見れば新緑の青が僕を癒してくれる。 ……なんだか後ろが騒がしい気がする。 僕は徐に振り返った。
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