Ⅰー6【帰宅】帰るべき場所へ

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記憶の奥底。 心の一番柔らかい場所に眠る、 それは、とても懐かしい光景だった――。 部活も終わった、黄昏時。 いつものようにいつものごとく、私たちは4人で連れ立って下校していた。 先頭は、上背のある、伊藤君。 その脇には、なにやらジャレつきながら歩く、おちゃらけ浩二。 その後に、私とハルカ。 付かず離れず。 伊藤君から、ほんの少し遅れて歩く。 それが、いつものポジション。 伊藤君の斜め後ろ姿がバッチリ見られて、幸せ~な気持ちに浸れるこの場所が、私の定位置。 闇に包まれる間際の空は、太陽の残照と夜のとばりの間で、金色から赤へ、そして群青へと、カラフルに色彩を変えていく。 その空を背景に、行き交う車のライトに照らし出された伊藤君のシルエットは、子供の頃に大好きだった繊細で美しい影絵のように見えた。 この情景が、私は一番、大好き。
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