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記憶の奥底。
心の一番柔らかい場所に眠る、
それは、とても懐かしい光景だった――。
部活も終わった、黄昏時。
いつものようにいつものごとく、私たちは4人で連れ立って下校していた。
先頭は、上背のある、伊藤君。
その脇には、なにやらジャレつきながら歩く、おちゃらけ浩二。
その後に、私とハルカ。
付かず離れず。
伊藤君から、ほんの少し遅れて歩く。
それが、いつものポジション。
伊藤君の斜め後ろ姿がバッチリ見られて、幸せ~な気持ちに浸れるこの場所が、私の定位置。
闇に包まれる間際の空は、太陽の残照と夜のとばりの間で、金色から赤へ、そして群青へと、カラフルに色彩を変えていく。
その空を背景に、行き交う車のライトに照らし出された伊藤君のシルエットは、子供の頃に大好きだった繊細で美しい影絵のように見えた。
この情景が、私は一番、大好き。
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