Ⅰー6【帰宅】帰るべき場所へ

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でも今日の私は、そんなことをしみじみと感じている余裕は全くなかった。 原因は、 『腹へったー。腹へったー。もう限界! 週末だし、たまには、お茶して帰ろうや』 と言う浩二の提案で、駅前のハンバーガーショップへ向かっていることにある。 高校に入学してから、早、三ヶ月。 季節は、桜が咲き誇る春から、猛暑厳しい、夏へと移ろい、 私の学校生活の楽しみの大部分を占めるのが、『伊藤君ウォッチ』になりつつあった今日この頃。 『学校以外でも、伊藤君と過ごせる』 これは、私にとっても、かなり嬉しい状況――のはずだ。 けど、 正直、心臓がバクバクと自己主張しすぎて、それどころじゃなく、 一方パニクリながらも、私の脳細胞は、テスト前夜よりも忙しなく働き、 『お店に着いたら、どんな話をしよう?』 『だんまりは、印象、悪いよね?』 『でも、おしゃべりし過ぎて、変な墓穴を掘りそうだし……』 なんて、らちも無いことを、脳内シミュレーションしていた。
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