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でも今日の私は、そんなことをしみじみと感じている余裕は全くなかった。
原因は、
『腹へったー。腹へったー。もう限界! 週末だし、たまには、お茶して帰ろうや』
と言う浩二の提案で、駅前のハンバーガーショップへ向かっていることにある。
高校に入学してから、早、三ヶ月。
季節は、桜が咲き誇る春から、猛暑厳しい、夏へと移ろい、
私の学校生活の楽しみの大部分を占めるのが、『伊藤君ウォッチ』になりつつあった今日この頃。
『学校以外でも、伊藤君と過ごせる』
これは、私にとっても、かなり嬉しい状況――のはずだ。
けど、
正直、心臓がバクバクと自己主張しすぎて、それどころじゃなく、
一方パニクリながらも、私の脳細胞は、テスト前夜よりも忙しなく働き、
『お店に着いたら、どんな話をしよう?』
『だんまりは、印象、悪いよね?』
『でも、おしゃべりし過ぎて、変な墓穴を掘りそうだし……』
なんて、らちも無いことを、脳内シミュレーションしていた。
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