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「あんたとお酒を一緒に飲むなんてね。」
私たちは駅近くの居酒屋に入った。
何から話そうかな。
「七絵ちゃん覚えてるの?」
アルコールを口にしながら
出逢いの頃から話始めた。
手帳を見ながら時より
目があう。
「直人の事は?」
あぁ
それねぇ。
あんたは遅刻をして
2時限目の私の数学の時間に
慌てて入ってきた。
高2が終わる
三学期末。
一人の生徒が私の授業の単位を
落としてしまう。
皆が問題を解いている時間
教室の後ろ
あんたの席へ周りお願いしたんだ。
「私の授業から脱落者出したくない。」
小声で交わした会話。
あんたは私の声にすぐ立ち上がり。
背中越しに声をあげた。
「七絵ちゃん遅刻したのにごめん。
なんか俺お腹痛くなっちゃって
保健室行って来るね。」
自転車で10分くらいの場所にある
その生徒の家に向けて。
あんたは廊下を走って校門を抜けて
迎えに行ってくれたっけ。
「部活も懐かしいよね。」
そうだね。
高3になって数学の時間は減った。
私も1年のクラスの副担になったし。
あんたと顔をあわす機会も少なくなった。
そんな時あんたは体育でケガをして
救急車で運ばれたって後から知った。
授業中の校内にサイレン音を消しながらも
ピカビカとランプを回した救急車が来れば
ざわつくものだから。
入院に手術。
1度だけ行ったお見舞い。
あんたは車イスに乗りながら
石膏に固められた足をみせて
冬までは走れないって。
寂しそうに俯いた。
復学したけど体育の授業は見学
バスケットが出来ないあんたを生物部に
誘ったのは
私。
あんたを含めて二人しかいない
生物部員。
一人は休みがちだったから
私と二人きりになる時
多かったよね。
水槽の前で
グーって居眠りしてる寝顔は
可愛かった。
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