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「ねぇ、待った~」
月末はいつもの仲間たちとの食事会。
待ち合わせはお馴染みの集合場所
最寄り駅にある連絡通路。
大学時代の教育実習の時からだから
15年の月日が経った。
いつも決まって遅れてくるのは
孝子。
私達は40才という壁を数年後に控えていながらも
独身を謳歌している。
これまで
恋愛をしてこなかったわけじゃない。
ただ最終的に結婚となると
踏み切れなかっただけで。
「仁美、遅いねぇ。」
孝子は遅れてきたことなんて
すっかり忘れているみたい。
「ねえ、ねえ、七絵っ!」
孝子が私の肩をちょんちょんと突っつく。
振り向くと孝子は
少し先に一人で立っている男性のことを
眼を細めて見ていた。
「なんか、面影ない?」
顎を親指と人差し指で軽く押さえながら
誰かの面影を探している。
「ちょっと、そんなに見てたら気づかれるからやめなよぉ。」
一体誰の面影を探しているのか。
でも
小さな手帳を真剣に見つめながら
辺りを見渡している動きは
どこか不自然で
そしてどことなく
見覚えのあるような横顔。
「あっ、仁美だ。」
その男性の前を横切って
こちらへ小走りにやってきた。
「お待たせぇ!」
仁美は到着するなり私達に
面影の答えを投げつけた。
「後ろの立っている人、岩井じゃない?」
【岩井…。】
「ほらぁ…孝子、青陵高校の。」
「えっ?…ラブレターの?」
「七絵…岩井だよ絶対。」
【岩井和哉…??。】
教育実習の時の
私の教え子。
教員免許を取得して赴任した高校で
初めて受け持ったクラスにいた
【教え子。】
「ねぇ…さすがに七絵は覚えてるでしょう?」
【赤い髪の毛が】周囲より目立った
教え子。
しくじってばかりで
クラスの男の子達や
主任や担任教師たちから
冷やかされる私を
【いつも庇ってくれた】
教え子。
「うん…まぁ。」
卒業式に
私に【ラブレター】をくれた。
教え子。
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