記憶の海の中へ

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私たちは 駅の歩道から繋がる 商業ビルの屋上へ向かった。 「覚えてることってどれだけあるの?」 青陵の生徒が授業サボって ビルの屋上でタバコ吸っているからって 学校に通報入って 私が迎えに来たこととか 覚えてないのかな。 「このビルの屋上に寝そべって 見上げた青空はなんとなく なんとなくだけど覚えてるかも。」 なんであんなに現代文の授業ばかり サボったのかなぁ。 あの時間帯は私がフリーだから いっつもあんたに時間とられて 残業増えてたんだから。 「現代文の先生が嫌いだったんだ 日記にも書いてあった。 そいつは七絵ちゃんの同期とかで すごく馴れ馴れしくしてたみたい。 だから俺 焼きもち妬いてたんだね。」 そうなの? あっきれた。 迎えに行けばにっこり笑って 少し遊ぼうよ なんて 腕組んできたりして。 「あんたわざとあの時間にしてたとか?」 川沿いのジョギングコースにも 迎えに行った。 駅の反対側出口にある楽器店も。 学校裏の神社にも。 「駅ナカをこうして歩いてると なんかデートしてるみたいね。」 ちょっとやめてよ でも周りからみたら もういい大人か。 あれ?でも 私に渡した手紙の内容 覚えてるのかな。 あんた 1回デートしてくださいって 書いてたんだよ。 返事を渡したの覚えてるのかな。 「青空じゃなくて夜景だね。 七絵ちゃん なんか付き合わせちゃって ごめんね。」 何よ改まって。 「いいよ別に。」 でも なんだか懐かしいな この屋上の風。 周りの建物はかなり変わって 風景は違うけれど この風は 変わらないんだ。 「俺ね… ほとんど覚えてないんだよ 10年くらい前にバイクで事故にあって。 そのあと3年して意識が戻って 家に帰れた時には両親もういなくて 親父は病気だったみたい ママ母は大切な人がいるからってでていった。」
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