level 2

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アスファルトの濡れた匂い。深緑の葉には透明の滴が連続して落ちている。 季節は本格的な梅雨に移り変わっていた。 今日は会社は休日だ。 特にやることもなかったので買ったまま積んであった本を数冊バッグに入れ、行きつけのカフェに来た。 テラスに通された時は雨は降っていなかったが、数ページ本をめくったところで、雨が降りだした。 ふう。と一息つくと、目の前に置かれたグラスを引き寄せる。ここのお店のアイスティーは気に入っている。 が、ここへ足を何度も運ぶのはそれ以外に理由があった。 「果夏!来てたんだ。」 私は声のした方に顔を向けると、片手をあげた。 そこには、ウェイターの格好をした若い男がにこやかに立っていた。 「久しぶり、望(のぞむ)。元気だった?」 望と、呼ばれた男は私の座るテーブルまで来ると、わしゃわしゃと音がしそうなくらいに私の頭を撫でた。 「ちょっと、やめてよー!ただでさえ湿気で頭ぐちゃぐちゃなのに!」 「じゃーいいじゃん。変わってない、変わってない!」 ケラケラと笑う望を少し睨んでみる。 望は高校時代からの唯一の男友達だ。 顔は可愛い系ではあるが、残念ながら背丈のほうも可愛らしい。成人
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