第1章―各々の非日(ひび)―Day to day

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「昨夜の東成市の夜の最低気温は10℃と、着々と気温が下がり続けています」 と、朝のテレビの中の人は言い、これについての討論が始まるところで勢い良く電源を切った。 「今日も、あついなー」 そういって窓から空を見ると太陽はご機嫌で今日も燦燦と行くんでヨロシクな八月の陽気。あんまり見ていると溶かされそうなので部屋の中に目を戻すと、すでにやられてる人が1名。 「えぇーと…アイス枕持ってきますか? マキさん?」 力無く頭を動かしたのを確認し、キッチンの冷蔵庫へ。冷凍室からアイス枕を取り、タオルを巻いてそっとマキさんの頭へ。 「じゃあ、食器片付けておきますからね」  ひんやりチャージで、もはや返答なし。 「ご飯だけは、ちゃんと食うんだよな」  と、小言を言いつつ手早く洗い、デザートの水饅頭を持って居間へ。 「おっ! 珍しく気が利くじゃない。いずや君」 頭の熱が取れ元気になったのか、視線は俺ではなく水饅頭に向いている。 目の前に水饅頭が置かれると、丸い水饅頭を一気に縦、横、斜めに切れ目をいれ、美味しそうに次々と平らげていく。 「うわ…また、その食べ方やっているんですか」 「ん? ダメ? こうすれば、1口食べる毎に切らなくてすむから食べやすいじゃない?」 素でそんなこと言うからツッコミどころありすぎて困るんだよな、この人は…。 「分からなくはないですけど、食卓でのマナーっていうのもありますし、なんていうかその姿の水饅頭が痛々しくてかわいそうです」 俺は普通に1口サイズに切って食べる。うん、旨い。 「んん~、まぁ、マナーってのは外で何かする時に世間の常識から守るためにあるものじゃない? だから家の中くらいはいいじゃない?」 「まぁ、はい…」 確かに、家の中までマナーだらけだったらストレスが溜まる。 半ば納得し、言いすぎたかもしれないと思い、水饅頭もあと一片のマキさんに謝罪も込めて納得の意を言おうと…。 「でも、かわいそうたって水饅頭も食べ物だから、口に入ってしまえば、ハイッ! 終了ぉ~ごちそうさま」 あぁ、台無しだ…
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