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「それで、このケースは何ですか? 化獣ではないのですか?」
めっきり聞かないようにしていたのに、いつのまにかマキさん武勇伝の片鱗に触れてしまっていた俺。
「そいつは化獣と偽者の力を両方持った[幻獣]」
と、[幻獣]の部分を強調して、ネタバラシができたことに小悪魔的な微笑を含むマキさんであった。
「そんなの恐すぎて想像つきません」
自分でも気づかない位、間髪入れずに思ったことを言ってしまった。
だが、マキさんも「まぁまぁ…最後まで聞いてよ」と宥めて話を続けた。
「[幻獣]… 確かに響きは恐ろしいけど、実際はそうでもないのよ?」
あまり乗り気ではないが、勉強(いきる)のために聞いておく。
「まず、1つは能力が完璧ではない。2つも持っているから200パーセントではなく、2つ合わせて百パーセントっていうケースが殆どなのよ。」
「両方持っているのに使いこなせてないってことですか?」
ふと、引っ掛かったので質問。
「そう。ただ、2つ目は[幻獣]自体が珍しい事例で存在が稀少ということ。上の人達も困ってるのよ」
「つまり、分からない部分が多いのですか?」
不安な気持ちたっぷりな俺に対して、マキさんは
「大丈夫よ」
と、白く澄んだ両手で俺の右手をやさしく包み、さっきまでとは違うやわらかい口調で言った。
「よっぽどのことがない限り、遭遇しないから大丈夫よ。それに、いざとなったら私とエイナが駆けつけるから安心して」
そう言い、マキさんは幼い子供を安心させるような微笑みをする。
「っっ!!」
やばい…不覚にも見入ってしまった。顔にでたら恥ずかしいのでエイナの方に向きながら続ける。
「じゃ、じゃあ、[幻獣]の200パーセントはレア中のレアですね?」
運なら平気だぞ、俺は! と自信満々に聞く。
「そうね、それこそ全チャンネルの星座占いで最下位になるくらいの確率よ」
テレビを指差し、上手いんだか下手なんだか曖昧な例えだが、マキさんなりに励ましてくれたので不安はなくなった。
「あっ! ちなみにさっきの写真の[幻獣]はどうだったのですか?」
どのくらい手強かったのか聞きたく質問したが、数秒後に俺は後悔する。
「なに? 珍しいじゃない? 聞きたいの?」
妖艶な表情を浮かべて聞いてくるマキさんに負けず俺は
「ハイッ!?勉強(いきる)のために!」
格好つけながらも空いている左手をマキさんの右手に添えた。
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