暴君に友はいない

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 ダンジョンから地上へ持ち帰られた物はギルドお抱えの商会へ売却され、その後商会の意向で各所へ売られて膨大な資源の元となるダンジョンを管理する礎になるのだ。  それとは別に部位を持ち帰った探索者の意思で得た報酬をそのまま自らの装備にしたり、他の者へ工面したりなどの自由もない訳ではない。  ギルドを介して他の探索者が得た素材を優先的に買収したりも出来る訳だが、その場合は当然探索者同士にある程度の交流が必要になる。  トイフェルがわざわざ顔を出したのも、「ギルドに口添えよろしくね」という面の皮が厚いお願いをするためである。  何もこれが始めてという訳ではない。五十階層のフロアボスを撃破する以前からグリードへと優先的に素材を譲るよう口添えしてきたのは事実だった。その見返りとしてザンクロウは高品質の各種ポーションや非常食などと言った物資を、グリード御用達の商人からギルドや他のところで買うよりも安く買い叩いてる訳だ。  だから今回も報酬は優先的にグリードへ売り付けるのは当たり前の事として記憶していたのだが、それがわざわざトイフェルだけでなく他の幹部連中まで引っ張って来たのは何故だろうか?  にこにこにこにこと、胡散臭い笑みのまま面白そうに眺めるトイフェルにザンクロウは舌打ちを一つ。 「お前、教える気ねーだろ」  そう悪態を吐けばまさにその通りだと頷いた後に「まあね」とにこにこ。にこにこにこにこ。にこにこにやにや。 「トイフェル……俺は確かにお前と同盟を結んでる。そのおかげで俺はてめぇらの商会からやたらと高品質なアイテムを格安で買い取れるし、俺は優先的におめぇら当てに物資を提供するようギルドに口添えしてやってる。それはいい、それはいいんだ――ただよぉ」  ザンクロウはぴん、と人差し指をトイフェルに向け――その先端には『魔弾』が飛び出すのを今か今かと待ち望むように光を迸らせている。 「あんまり目障りなら同盟なんざ不意にしてぶっ潰してやっても構わねぇんだぜぇ? 俺はよぉ」  もともと利害関係が一致しているだけの間柄だった。そこに私情などと言った余計な感情は存在せず。  『Sランク冒険者』として日々大迷宮の最深部に潜り続けるザンクロウ、魔物が徘徊し危険な植物が蔓延する大迷宮の中で、安全な生活を維持するにはどうしても回復薬や食料といった物資が必要だ。
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