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グリードが運営する商会は、そういった物資を格安で取り引きできる都合のいい相手だったのだ。
そう、ただただ都合のいい取引相手に過ぎない。
大迷宮を踏破し続け、もはや莫大な財産を保有するザンクロウにとって、そんな同盟はあっても無くても同じなように思えて。にもかかわらず未だに同盟関係を結んでいるのは、それはひとえに気紛れによるものであり。
そもそもザンクロウはトイフェルという一個人に対してあまりいい印象を持っていない。グリード頭領トイフェル、裏社会の支配者、絶対に敵に回してはいけない人物――暗い噂が絶えない不吉な男。
聞くところによれば、最近また裏の世界でこそこそ暗躍してるという噂を耳にした。おそらくそれは間違いない。この男が表の世界に現れる時、決まって裏の世界では何かが蠢いている。
そしてその蠢く何かは、そう遠くない日に大事件となって表の世界を賑わせるのだ。
トイフェルがこの街で何を始めようとザンクロウはまったく興味はないけれど――とにかく気に食わない。
ここで同盟関係を破り捨て、この場でトイフェルを殺してしまうのも、いっそ後々の自分のためだと思い始めていて。
「それは怖いな。俺としてはこのまま同盟関係は続けたいんで、ひとまず誤解はといておくけれど」
「……悪い事って訳じゃねーんだよな?」
「うーん、難しいね。一概に悪い事とは言えないけれど、だからと言って良い事と言い切るのも難しいかな」
「ま、とりあえずはギルドマスターと話してきなよ」と最後に付け加えて、一階の一角に陣取っていたグリードの幹部の場所へ歩き出すトイフェル。
その後ろ姿を眺めて再び舌打ちを一つ。今も奇妙な静寂に包まれているギルド内を気にしないようにして歩き出した。
何の自慢にもなりはしないが、自らは決して気の長い人柄ではないとザンクロウは理解していた。
こんな生活を続けていればそうなるのはむしろ当然とも言えるが、幼少期から常に一人で行動を続け、殺るか殺られるか。奪って生きるか奪われて死ぬか。その両極端な生活を魔法を行使し力任せに過ごしてきた彼は、前世で形成された人格をいっそ暴力的と呼べるものへ変貌させた。
戸惑えば、奪われるのは自分なのだ。
人の命が端金でやり取りされるテンプレと言えばテンプレの異世界で、彼はその攻撃性と魔法をもって今日まで命を繋いできた。
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