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もとより、村人たちが《忌み子》であるザンクロウをよく思っていないのはわかっていたことだった。そこへ、ザンクロウが紛いなりにも魔法を会得したという事実が、村人たちの懐疑心を確定的なものとした。
村人たちは彼に奇異の目を向けていたけれど、真実、彼はどこにでもいるような凡人だった。凡人は凡人らしく、真っ当に友達を作ろうとして、真っ当に父親に愛を強請った。
しかし、近寄った村の子供たちは『化物!』と彼を蔑み、父親は拒絶するように『近寄るな』と拳を振るった。
誰からも愛されず、受け入れられない『忌み子』が彼だ。村人たちが彼を腫れ物のように扱おうと、それでもザンクロウの心はまだ歪まなかった。
ただ、その歪みにきっかけがあったとするならば。
ある日、村へ訪れた行商人に父親がついでとばかりに二束三文で売り飛ばそうとして――
奴隷制度も口減らしも、ましてや村にとって邪魔者でしかない『忌み子』となれば、お約束と言えばお約束だった。
村人にとって不幸か幸いか、魔力を使った一人遊びの賜物か、この時点でそこそこの魔法を扱えたザンクロウはこれまたそこそこの容姿も加味され、同年齢層の男児に比べてそこそこ高く売られる事になったのだ。
事前にその事を知れたのはまさに偶然。管理がなってないのか、それとも教育が杜撰なのか。いつも自主練に使っている人気のない場所にわざわざ出向いてきた村のガキ大将が今までの鬱憤を晴らすように口汚く彼を罵り蔑み、とどめとばかりにその情報を教えてくれたのだ。
バカである。どう言い繕ってもバカである。
強いて言うならその時だろう、彼の心に初めて歪みが生まれたのは。
結果、ザンクロウは売られることも買われることもなく無事に村人の魔の手から逃げ出したのだ。
その頃弱冠11歳。
もともと魔法に感しては天賦の才があるザンクロウ。使える魔法は最低ランクの教育環境でも鍛錬が可能な全魔法の中で最低威力の『魔弾(バレット)』のみであったが、それでも一つの魔法のみに絞って鍛え上げた練度の高い彼の『魔弾』は、森の茂みに潜む盗賊団や猛獣程度ならいとも容易く撃退することができた。
当時の彼は既に魔法使いとしてそこそこの高みに至っていたのだ。
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